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内なる河と外なる河が出会う場所──サティシュ・クマール × 前野隆司 対話録


(本ブログは、2021年9月のZen2.0での対談記録から書き起こしをさせていただいております。)

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二つのエコロジーが織りなす、新しい地球の物語

「エコロジー」という言葉を耳にするとき、私たちの多くは森や山、川や海を思い浮かべる。しかし、85歳の平和活動家であり、シューマッハー・カレッジの創設者でもあるサティシュ・クマールは、もう一つの重要な環境があることを静かに、しかし力強く語りかける。それは、私たちの「内なる環境」だ。

2021年のZen2.0で実現した、サティシュと慶應義塾大学大学院の前野隆司教授との対話は、この二つのエコロジー──外なる自然と内なる精神──がどのように響き合い、新しい地球の可能性を開くのかを探る、深遠な探求の時間となった。

半分の脳しか使わない教育への問い

サティシュが最初に投げかけたのは、現代の教育システムへの根本的な問いだった。東京大学であれ、ハーバードであれ、オックスフォードであれ、世界の名だたる大学は学生の「半分の脳」しか育てていないと彼は指摘する。

「人間には二つの脳がある。左脳は論理、推論、測定、科学を司る。しかし右脳は、魂、想像力、直感、感情を司るのです」

彼の言葉には、学問が知識の伝達に留まり、勇気や信頼、思いやりといった内なる資質を育むことを忘れてきた現代社会への深い洞察がある。この不均衡が、自然を単なる「経済のための資源」と見なす世界観を生み出してきたのだ。

だからこそサティシュは、シューマッハー・カレッジを創設した。「内なるエコロジーと外なるエコロジーのバランスを取り戻す」ための学びの場として。

弱さを認めることから始まる、大乗仏教の叡智

この対話の中で、前野教授が分かち合ったのは日本の大乗仏教が持つ独特の視座だった。原始仏教が個人の悟りを目指すのに対し、大乗仏教は「私たちは皆、不完全で弱い存在だからこそ、助け合わなければならない」という認識から始まる。

「私たちは不完全で、弱く、地球を壊してしまうこともある。でもそれでいいんです。間違いを犯すこともある。でも一緒に創造し、この世界を共に紡いでいくことができる」

この言葉に、サティシュは深く頷く。ティク・ナット・ハンが語った「インタービーイング(相互存在)」の概念──私たちは分離した個人ではなく、すべてが繋がり合った存在であるという洞察と、見事に響き合っているからだ。

「私たちは皆、繋がっている。関係し合っている。インタービーイングなのです。自分自身を宇宙の中に見て、宇宙を自分自身の中に見る。それが鍵なのです」

多様性という名の水を、異なる河から飲む

興味深いことに、二人の対話は宗教の多様性へと自然に流れていった。仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教──これらは異なる伝統ではあるが、サティシュにとってそれらは「同じ水を運ぶ、異なる河」に過ぎない。

「インドにはガンジス川があり、ロンドンにはテムズ川があり、ニューヨークにはハドソン川がある。私たちはそれぞれに異なる名前をつけるけれど、水は同じなのです」

彼が語るのは、愛、思いやり、寛大さ、親切さ、信頼、勇気──これらの精神的価値こそが「水」であり、真の宗教の本質だということだ。名前や形式にこだわるのではなく、実践こそが重要なのだと。

小さな種から、大きな果樹園は生まれる

では、私たちは一体どこから始めればいいのか。前野教授の問いに、サティシュは「Small is Beautiful(小さいことは美しい)」という、シューマッハーの言葉で答える。

「どんぐり一つから、大きなオークの木が育つ。それをただ土に植えればいい。太陽が助け、雨が助け、土が助けてくれる」

シューマッハー・カレッジも、30年前には小さな始まりだった。今では世界中に15,000人の卒業生がいる。仏陀も最初はたった四人の弟子に教えを説いただけだった。

重要なのは、結果への執着を手放し、純粋で善良な行動そのものに献身すること。その行動は野火のように広がっていくのだ。

権力者ではなく、草の根の人々の力を信じる

最後に、サティシュは一つの「ラディカルな提案」を投げかける。政治家や大企業に変化を求めるのではなく、草の根の人々の力を信じよと。

「マハトマ・ガンジーはデリーではなく、小さな村から始めた。マーティン・ルーサー・キングはホワイトハウスではなく、草の根運動から始めた。超大国はアメリカでも中国でもロシアでもない。超大国とは、人々の力なのです」

プラスチックを買うのをやめること。産業製品をボイコットすること。エコロジカルに生きること。そうした一人ひとりの選択が積み重なれば、政府も企業も変わらざるを得ない。

体験へのお誘い

でも、この発見の本当の面白さは、思考の中だけにあるのでしょうか?

もしかしたら、その答えは、鎌倉の石段を一歩一歩踏みしめる足音や、お寺の庭で頬に触れる風の感触、そして、この街で出会う人々との何気ない会話の中にこそ、隠れているのかもしれません。

今回のような探求の対話は、私たちのYouTubeチャンネルでいつでもご覧いただけます。時代を超えた叡智と今を生きる私たちの問いを結びつける対話を続けていますので、よろしければチャンネル登録でご一緒ください。

そして、もしあなたが「頭で分かる」から「体で感じる」へと、この探求を深めてみたくなったなら。この秋、鎌倉全体を舞台にした 「Mindful City Kamakura Week」 で、お待ちしています。自分、自然、そして出会う人々との繋がりを、五感で再発見する特別な一週間です。

今年のZen2.0は鎌倉の街全体を寺院とした 〜Mindful City Kamakura Week〜

この秋、鎌倉の街全体を舞台にした新しい挑戦「Mindful City Kamakura Week」がはじまります。11月16日から22日の7日間、海や山、森や寺社仏閣といった鎌倉ならではの豊かな自然と歴史ある文化空間が、マインドフルネスを体験し表現する舞台へと姿を変えます。

テーマは「Spirituality in Nature」。Zen2.0で8年間育まれてきた精神を礎に、日常に寄り添う実践をさらに広げ、誰もが自らの感性を持ち寄って共に創るフェスティバルです。プログラムはワークショップや対話、伝統芸能やアート、食やビジネスの取り組みに至るまで幅広く、参加者自身が「出展者」として企画し実現できる開かれた仕組みとなっています。


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福井県でも11月にZenのイベントを開催

Mindful City Kamakura Week
Zen2.0

This event is organized by Zen2.0.

Zen2.0は、神奈川県鎌倉市で毎年開催されている禅とマインドフルネスの国際カンファレンスです。

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